■第6章(4)

「はー…」
再び熱い泥濘に中心を包まれ、俊介は快楽に抗わずに息を吐き出した。松田を見遣れば、懇願するような眼差しを自分に向けている。なに?と問えば、
「もう、やめ…っ…」
「えー?マッチーまだイッてないじゃん」
こっちで、と、引いて押し込む。俊介の先走りのせいか、それだけで濡れた音がした。松田は眉を寄せて目尻を染め、首を振った。
「も…もう、いいっ…」
羞恥か屈辱か、どちらにしろ耐え切れない様子で涙声を出す松田を、俊介は他人事のように可哀想に、と思う。余計なことを気にせず素直に身を任せてしまえば、泣くような思いをしないで済むのに。
ゆるゆると動きながら、松田の目に浮かんだ雫を指先で拭い取る。
「ね、泣かないでよ。俺だけ気持ちよくなっても意味ないんだって。俺なりにマッチーにも奉仕したいと思ってんだからさ」
「ん…うっ…」
「気持ちいいでしょ?…一緒にイこーよ」
触れた手で、頬を包み込む。自然と顔が近づいた。
は、と熱い息を吐く松田の唇を、先ほどしたように親指でなぞる。言葉もなく、ただ見つめ合う。

松田がふいに、目を閉じた。

「ん、っ…」
特に意味はなかったのかもしれない。ただ俊介に見られているのが辛かっただけなのかもしれない。
それでも、俊介は吸い寄せられるように松田の唇にキスをしていた。頭の片隅で、さっきは我慢したのに、という自分の声がした。
「…っ、」
数秒触れ合わせて離れる。そっと目を開けると、松田の表情は一変していた。頬を染めて目を潤ませているのは変わらない。ただ、その目が訴えるものが違って見えた。先ほどまでの脅えた様子とは違う…まるで。
「…ナカ、動いてる。マッチー、キス好きなの?」
「…あ」
繋がった部分に目をやるように視線を動かし、俊介は唇を重ねた瞬間から感じた内部のうねりを指摘した。松田も気づいて、小さく声を上げる。
「ね、エッチの時だけキスしようか。その方が感じるみたいだし」
我ながら名案だと思いながら、俊介は再び松田に顔を寄せる。鼻が触れ合うほどに近くなっても反らさないのを肯定と取って、少し開いた唇を上から塞いだ。そのまま、抽迭を激しくする。
「ん、んっ…ん…」
「…、は、…マッチー、」
名前を呼ぶと、松田の腕が背中に回った。俊介も松田の背中に片腕を差し入れる。触れ合う肌の面積が大きくなり、
「あったかい…」
「あ、あっ、あっ俊っ…ぁ、いく」
甘く鳴き続ける松田に、俊介の呟きが届いたかどうかは分からない。
「あ、ぁあ、っ…」
「…っん」
下腹部に熱いものを感じると同時に内部が絞り込むように痙攣し、俊介は目を固く閉じて息を詰めると腰を引いて、離れた繋がりの代わりにもう一度唇を重ねて絶頂に身を委ねた。

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