■第5章(1)

引越しから一ヶ月ほど経過した正人の部屋は、段ボールに入れたままの荷物もすっかり片付いていた。
「は…あっ、あ、あ、」
片付いた床には、今は脱ぎ捨てられた二人分の服が散らばっている。
先程までその服を身につけていた二人は、シーツの上で互いの熱を高めあっていた。
「ナオ、はぁ…ナオっ…」
「あっ…」
恍惚とした表情で腰を振っていた正人が、不意に松田の首筋に唇を寄せる。舌が這う感触の後に強く吸われ、松田は全身を震わせた。
硬く張りつめた雄を受け入れた部分もひくりと痙攣し、正人はそれを合図にさらに息を荒げて松田を責めた。
「あ、あっ、あっ正人、正人っ…だめ、あぁっ…」
「ナオ…ナオ、…っ!」
どく、と正人が脈打ち、同時に松田も白く意識を飛ばした。

「…ねえ、俺の匂いってどんなの?」
愛し合ったままのベッドで身を寄せ合い、松田は俊介に言われて気になっていたことを正人に聞いてみた。
「匂い?誰かに言われた?」
「うん、あの…先輩の女性に、いい匂いするって」
とっさに無関係の人間を引き合いに出してしまったのは、正人の知らないところで俊介と過ごしていることが少し後ろめたく感じられたからだ。母子家庭の少年の世話を焼いていると言えば松田の性格を分かっている正人なら理解してくれそうなものだが、本当に後ろめたいのは俊介に対する気持ちを隠して、正人と関係を持ち続けていることかもしれない。
一人暮らしを始めてからというもの、正人は部屋に松田を招く度に、体を重ねることを求めてきた。松田も拒むことなくそれに応じ、触れられれば乱れ、快楽に熱を吐き出した。
それでも、気まぐれに松田の勤務先に現れて以来連絡すらない俊介のことを想っては、胸を痛める日は続いていた。
友達は出来ただろうか、授業にはついて行けているだろうか、食事はちゃんとしているだろうか、…誰か別の人を抱いたりしていないだろうか。
求めてきたにも関わらず最初の一度きりだけで関係を持つことをしない俊介に、安心する反面焦れたような思いがあるのも事実だった。

「自分では気づかないんだ?こんないい匂いするのに」
後ろを向かされ抱きしめられると、正人は松田の髪をかきわけてうなじに吸い付いてくる。
「ナオが女の子にモテるのって、この匂いのせいじゃない?フェロモンとか、その類いかも…俺だって、ほら」
「そんなこと…あ、」
否定しようとしたところで、触れるものが硬くなりかけているのを感じ、ぽっと顔が熱くなった。尻たぶの間に擦り付けるように腰を動かされ、それはあっという間に硬さを取り戻して行く。
「あ…正人、もうだめだって」
「いいじゃん…明日休みだろ?俺も午後からだし…それに、」
片足を持ち上げられぐっと押し付けられると、松田の蕾はひくひくと動いて先端を食んだ。先程の射精はゴムの中に放たれたけれど、一度融かされた松田の中はぬるついて、容易に正人を迎え入れる。
「ほら、こんな簡単に入ってく…」
「ああっ…」
腰を揺すられぞくりと這い上がった快楽に、松田は再び呑まれて行った。

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