■第3章(4)

「でもさぁ…ココロとカラダって別物なんだよね。別に付き合ってなくたって、どーーでもいい相手だって、エッチすれば気持ちいーしさ」
「っ…」
どうでもいい、を大袈裟に強調する俊介の物言いに、松田の胸がちくりと痛む。
「ああ、別にマッチーのこと言ってる訳じゃなくて。俺それなりにマッチーのことは、…なんだろね、まあ信頼もしてるし、だからこういうことも話すし」
松田の心の中を見透かしたようにカラカラと笑うと、俊介はまた静かに目を伏せた。

彼は何を言いたいのだろう。
もはや食事を続けながら聞くような気にはなれず、松田はスプーンを置いて膝の上で手を組んだ。

「思春期まっ只中の俺としては、やっぱいないと困るんだよねえ…、セフレ」
真剣に話を聞こうとする松田の態度とは逆に、俊介はちゃらけた様子で言ってのけた。最後の一言は、他の誰でもない松田に向けて。
「…そんなことを、言いに来たってこと」
無意識に後ずさる松田に、俊介は15歳らしからぬ不敵な笑みを浮かべて、開いた距離を戻すように身を乗り出した。
顔が近づく。松田が息を詰めると、俊介は再び口角を上げた。
「マッチーだよ。したければどうぞって言ったのは」
その笑みに、松田は戦慄した。先日このソファでされたことが思い起こされ、全身にざわっと鳥肌が立つ。
息をするのも苦しいような沈黙の後、俊介は松田から離れてソファの背もたれに体を預けた。松田も金縛りが解けたように力を抜き、一度大きく空気を吸い込む。
「そんな警戒しないでよ。今日は何もする気ないから」
「今日はって、」
「いいじゃん、マッチーはちゃーんと本命の彼氏がいるし、俺は特に恋愛は求めてない。後腐れなしってことで」
俊介はそう言うと目を細めた。

松田は混乱する思考回路を必死に繋ぎ合わせ、事の成り行きを整理しようとした。
弟のように思っていた少年に先日突然犯されて、その少年が今日また自分のところにやってきて、割り切った体だけの関係を持とうと言う。
…自分がこの少年に対する恋愛感情を持っているとも知らず。
「俊、それは無理だよ。ちゃんと考えて、」
「じゃあ戻るだけだよ。前みたいに、テキトーに相手作ってさ」
「それはダメ、俊だって、止めて楽になったってさっき言ったばかりだろ」
「だから別物なんだって、それもさっき言った」
「俊…」
松田は額を手で覆って項垂れた。
何て不毛な口論なんだろう。疲労感がどっと増すようで、ずきりと頭痛がした。

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