■第2章(6)

柔らかい金髪をかきわけてうなじに吸い付く。と、
「こら、俊こそ…からかうんじゃないの」
こつ、と後頭部に軽い衝撃を感じ、動きを止めた。
からかっている、自分が?松田を?そう、冗談で済ますなら今のうちだ。顔を上げて、ごめんと笑って詫びればいい。そう思うのに。
自分を制する松田の声が、震えているから。
初めて、松田より優位に立てる。そう思うと体中が燃え上がるような感覚に支配され、その熱を性衝動とない交ぜにしてぶつけるより他に方法がなかった。
「俊っ…」
松田を押し倒してソファに乗り上げた時、プレゼントされた手帳がばさりと音を立てて床に落ちた。

不思議なほどに、松田は抵抗らしい抵抗を見せなかった。
肌を露にして掌を滑らせても、指先で秘所を暴いても、耐えるように唇を噛み締めて震えるばかりで。それどころか、俊介が触れる度に熱を増す肢体は、さらに匂い立って俊介を引きずり込んで行く。
(なんなんだよっ…)
セックスでこんなに興奮したことはない。セックスに限らず、何をするにも冷めた感覚しかなかったはずなのに、ただ一人の男に対して、どうしてこんな。
「……っ、あぁっ…!」
脚を開かせて剛直を突き立てると、松田は一瞬腰を跳ね上げて身を硬くした。
痛いのだろうか、それを気遣う余裕もないまま、俊介は強く腰を打ち付ける。体の芯を突き抜けるような快感への戸惑いを打ち消すかのように、何度も、何度も。
「くそ…っ」
今までにない高揚感に抗う事無く抜き差しを速めれば、先に昇り詰めたのは組み敷かれている松田のほうだった。
「あっ、あ…、ダメ、ダメっ俊、ぁ、……っ!」
うわ言のように喘ぎながら、最後は声を我慢するように手の甲を口に押し当て、びくんと大きく震えて果てた。
−−松田を達かせた。
脳がそれを判断した途端、急激に高まった射精感が俊介を襲う。直前で腰を引くと、手で刺激するまでもなく真っ白な精液が吐き出され、未だ震えの収まらない松田の下腹部を汚した。

「は…っ、は…」
息が荒い。今までのセックスではこんなことなどなかったのに。
手で拭うと、額に汗もかいていた。情けない話だがセックスしていた時間はさほど長くはない。それだけ、昂っていたというのか。この自分が。しかも松田を相手に。
「……っ」
かぶりを振り、テーブルの上からティッシュを無造作に取る。自分の始末を済ませると新しい数枚を取って、
「…いつまでイッてんの」
乱暴に、松田の腹を拭った。
「ん…っ」
目尻を染めて太腿の内側をひくつかせる様に、俊介は体に残る熱とは裏腹な、冷たい笑みを浮かべた。
「えっろい声…マッチー、レイプされてそんな声出すんだ」
それは、俊介自身の。
「…淫乱」
松田を求めてしまった自分に対する、精一杯の強がりでしかなかった。

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