5代目拍手お礼小説 25000hitキリリク
yumi様より「トモオミラブラブ度アップ(18禁)」トモ嫉妬・誤解絡み


風呂から上がると台所ではほっけを焼き始めたいい香りがしていて、完全には失われていない食欲をかき集めて夕飯を平らげると、その夜はすぐ床に就いたのだった。
そのせいか翌朝はいつもより早めに目が覚めて、俺はそのまま早い電車で登校することにして。
学校の最寄り駅に降り立つと、カオリちゃんが俺を待っていた。
初めは俺を待っているのではないんだと思ったが、彼女は俺を見つけると真っ直ぐ歩み寄って来たのだ。
「もう具合はいいの?ごめんね、昨日電話しちゃって」
「ああ、うん…平気、気にしないで」
「よかった、和臣より先に幸田君に会えて」

和臣。

カオリちゃんの口から出たその名前に、思わず心臓を押さえる。その様子を見て、俺がまだ体調が良くないと思ったらしい…カオリちゃんは心配そうに俺の肩に手をかけた。
「大丈夫?あんまり、顔色が良くないみたい」
「だ、大丈夫…なんでもない」
悩みの種を目の前にして大丈夫なんてこともないけど、歩き出した俺にカオリちゃんも付いて来る。

「あのね、幸田君と話がしたかったの」
そう切り出されて、思わず足を止めた。あまり視線の高さが変わらないカオリちゃんの方を向くと、彼女は慌てたように顔の前で手を振って笑顔で続ける。
「あ、別に大した話じゃないから。でも、和臣がちょっと大袈裟に考えてて、幸田君には話さない方がいいって…。私はちゃんと話した方がいいって言ったんだけど聞かないから、直接話しちゃおうと思って」
「…そう、なんだ」

カオリちゃんにとっては大したことじゃない。
でもオミにとっては、俺には知られたくないこと。
それって、やっぱり。
やっぱり……

「それでね、幸田君、」
いよいよ核心に迫るかと、息を呑んだ瞬間。
「あー、いた!トモ!」
けたたましいブレーキの音と共に、オミの自転車が俺の横を通り過ぎ、少し先で止まった。
そのままバックで戻って来ると、カオリちゃんを見てはあ、と溜め息をついた。
「…カオリが連れてったのか?」
「だってしょうがないでしょ。和臣がいると幸田君と話せないんだもん」
俺の横で繰り広げられるやり取りの裏にあるものが、さっき聞いた『オミにとっては俺に知られたくないこと』を意味しているように思えてならない。
そんなに、俺に知られたくないなら。俺だって。
「あの、いいよ。オミが話したくないんなら、」
「幸田君!」

突然、カオリちゃんが俺の手を掴んで走り出した。
「え!?」
驚いたのは俺だけじゃない。思わず振り返ると、オミも呆然としている。
が、しばらくしてから、自転車を押しながら猛然と追いかけてきた。
「おい、ちょっと待てって!」
「うるさい!」
オミが止める声にも、カオリちゃんは全くひるまない。
俺たちはそのまま、校舎へと駆け込んで行った。

カオリちゃんと俺は真っ直ぐ下駄箱へ、オミは自転車置き場へ。
「幸田君、早く!」
突っ掛けるように上履きのスニーカーを履いて、オミに追いつかれないうちにとカオリちゃんはまたすぐに走り出す。
「ちょ、っと、待って…!」
速い速い。
短めのスカートの裾なんか気にしないで、カオリちゃんは階段も一段飛ばしで駆け上がって行く。
カオリちゃんてこんなに足速かったのか?もしかして俺より脚長いんじゃないか!?
そんなことを考えながら必死に付いて行って、俺たちは教室に寄ることなく、屋上庭園の片隅…生徒達のいる教室や廊下からは見えない場所まで走ってきた。

「ごめんね、幸田君…病み上がりなのに、」
胸を押さえて息を整えながら、カオリちゃんが俺を気遣う。「巻けたかな?」とオミが追ってこないことを確認して、ちょっと楽しそうに笑った。
促されてベンチに腰掛ける。女の子と二人で並んでなんて滅多にあることじゃないし、これからどんな話を聞くのかという不安もあって、少し緊張した。
「実はね…私、2年生の先輩から付き合って欲しいって言われてて」
「へ?」
想像と違うカオリちゃんの告白に、思わず声が裏返ってしまった。
「オミと付き合ってる、んじゃなくて…?」
と思ったままを返すと、カオリちゃんは綺麗な手で額を覆って溜め息をつく。
「やっぱり勘違いしてたんだー。だから幸田君には最初から話した方がいいって言ったのに」

カオリちゃんが言うにはこうだ。
突然、面識のない先輩から付き合って欲しいと言われたカオリちゃんは、当然断った。
それでもその先輩はなかなか引き下がらず、校内や登下校中にも彼女の前に現れては交際を申し込んで来ていたらしい。
困ったカオリちゃんがオミに一度相談すると、決定的に諦めさせるためにということで、仲のいいカップルを装うことにしたそうで。
「フリ」だとばれると作戦が上手く行かないので、皆には黙っていたとのこと。
一度下校中に後をつけられたことがあり、その時に駅への道を外れて、オミのアパートの方へ向かったのだそうだ。

「ごめんね。幸田君まで騙すのは良くないって思ったんだけど、和臣は幸田君を巻き込みたくないって言ってたから」
カオリちゃんが言うことに嘘はないだろう。彼女が「フリ」だと言うなら、きっと本当に「フリ」なのだ。少なくともカオリちゃんにとっては。
「よかったの、俺に話しちゃって。オミ怒るんじゃないかな」
「いいの。これ以上続けてたっていつかボロは出るし、そろそろ何とかしないとね」
カオリちゃんはそう言って、何故オミがこの笑顔よりも俺を選んだのか不思議なくらい、綺麗に笑った。

オミとも話をしたかったけど、HR開始ギリギリで教室に戻ったために時間がなかったので休み時間を待って、3人でバルコニーに出た。
「おい佐藤、幸田と駆け落ちしたんだって?」
「ハイハイ、そういうことにしといて」
俺たちを覗いて囃すクラスメイトを適当にあしらってピシャっと窓を閉めると、カオリちゃんはオミに向かってはっきりと言った。
「もう『フリ』はおしまい。直接先輩に言って、ちゃんと分かってもらう。幸田君にも全部話したから」

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