「頑張ったよな、俺たち」
「うん」
「超バッチリ決まってたし、一番盛り上がってたもんな」
「うん」
お疲れ会兼夕飯の、ラーメン屋。並んだラーメンの間には「目録」と書かれた熨斗袋。

『後夜祭パフォーマンス 第2位』の。

「なんで2位なんだよお〜〜〜」
オミにしては珍しく情けない声を出して、カウンターに突っ伏した。
優勝を手にできるという実感があっただけに、その落胆ぶりは大層なものだ。
実際に優勝したのは、俺たちの前に出ていた2年生の漫才コンビ。早くもどこかのお笑い大会に出場オファーがあったとかなかったとか。
「まあ、仕方ないよ。ホントに面白かったもん」
舞台袖で出番を待っていた時、最後の方しかきちんと見ていなかったけれど、それでも緊張を忘れて笑えるほどによく出来たネタだったのだ。
「俺は…俺は賞品もらえないのか…?」
突っ伏した腕の隙間から目だけ上げて、これまた情けない様子で問うて来るオミ。
「もらったじゃん。目録だけど」
しかも後日もらえるのは校章の入ったノートやら鉛筆やらの文房具セットだそうだけど。優勝が金券5,000円分なら、2位は3,000円分くらいもらってもいいんじゃないだろうか。優勝することしか考えてなくて、2位以下の賞品なんて全く気にしていなかった。
「そうじゃなくて…願掛けしてた方」
オミはむくりと起き上がってじっと俺の目を見つめて来る。意味が分かって、俺は思わずたじろいだ。
俺の体のためにと、初めての時から今日までずっと、2度目のセックスに踏み切らずにきたのだ。それをオミは優勝のための願掛けと銘打って禁欲を続けてきたのだから、優勝を逃した今どうなるのか。
「…いいんじゃないかな」
視線を外し、延びかけたラーメンを箸でつまんで。
「頑張ったんだし、ご褒美もらっても」
それ以上何も聞かれないように、一気に啜った。

何ヶ月もかけて練習してきた後夜祭のパフォーマンスは終わった。
でも、何年もかけて築いてきた俺たちの関係は、まだまだこれからなのだ。

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