「うわー…満員じゃん…」
全校生徒が入るだけの大講堂は空席が見当たらないほどに盛況で、熱気や歓声がステージ裏にも伝わって来る。
「どうしようオミ、俺緊張してきた」
中学生の頃からストリートでパフォーマンスしてきたオミと違って、俺は人前で何かすることには慣れていない。器械体操部の生徒に手伝ってもらって作り上げた大技もある。失敗してオミの足を引っ張ることだけはしたくないと思うほど、緊張が増して行くようだった。
「大丈夫だって。トモがどこに飛んでっても、絶対受け止めるから」
オミは任せろというように胸を叩いてみせる。こくりと頷いたものの緊張で強張ったままの俺の表情を見て、しょうがないなと腕を伸ばしてきた。
「わっ…」
すっぽりと腕の中に抱き込まれる。周りには、他の出場者や委員の生徒たちもいるのに。まずいと思ったけれど、耳元にオミの唇が寄せられて声を吹き込まれると、魔法のように動けなくなった。
「絶対、大丈夫だから。何があっても俺が全部フォローするし、トモに怪我させたりしない」
「うん…」
オミの声を聞いているうちに、不思議と緊張も解けてくる。ステージを窺うと、俺たちの前の組が漫才で盛り上げているところだった。
「ステージ、いい感じにあったまってんな」
オミが楽しそうに目を光らせる。
『ありがとうございましたー』
『中田中のお二人でしたー!いやー大爆笑でしたねー。さあ続いては、注目の1年生コンビの登場です!』
司会進行役が俺たちの出番を告げた途端、講堂がわっと沸いた。
オミの目の輝きが増して行く。
「結構、君らを見たいって人も多いんだよ。頑張って」
戻ってきた漫才二人組からすれ違い様に声をかけられて、俺たちはライトに照らされたステージへと駆け出した。

『いやーすごい、すごい盛り上がりです!スタンディングオベーション、拍手が鳴り止みません!』
俺たちのパフォーマンスは大成功。息もぴったり合ったし、オミは宣言通りにしっかり俺を受け止めてくれて、いつのどんな練習よりも上手く行った。
「トモ、これマジでいけるんじゃないか?!」
オミもかなり手応えがあったようだ。興奮気味に俺の肩を揺さぶる。
最後の組まで終えて、出場者全員がステージに集められた。
『さあ、客席の皆様が投じてくださった票の集計が終わりました。いよいよ順位の発表です!』
俺の肩を抱くオミの手に、ぐっと力がこもった。

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