文化祭開催日は祝日ということもあって、生徒の家族から友達、受験を希望する中学生等、大勢の来校者で賑わいを見せた。
ちなみに生徒は出し物がなくても全員出席が基本。ということで、俺たちも朝から校内をぶらついて、クラスメイトの所属する部活の発表や模擬店を見て回っていた。
「あっ、和臣。幸田君も、いらっしゃい」
「あートモ君だー!クレープ食べてってよ!」
クラスの女子が主催した模擬店を覗いたら、お揃いのエプロン姿のカオリちゃんとユイに出迎えられた。
「おーユイ。馬子にも衣装だな、可愛い可愛い」
俺より小さいユイの頭をぽんぽんしてやると、ユイはぷっと頬を膨らます。そんな様子を、オミとカオリちゃんが笑いながら見ていた。
「食ってけよー、結構うまいぞー」
女子の模擬店のはずが聞こえた男の声。奥に目を向けると、声の主はクレープ生地に色とりどりのフルーツを並べている、ウェイターの格好をした…
「俊かよ!なんでここの手伝いしてんだ?てか似合うな、そのカッコ…」
およそこういった出し物には参加しそうにない男との遭遇はもとより、意外にハマっていることの方がさらに驚きだった。ちょっとした客寄せにもなりそうなほどだ。
「奈良君ね、他に何も参加するものがないみたいだからお願いしたの。男手があると助かるし」
「そうそう、それに奈良って意外と甘党なんだよねー」
こうなった経緯を説明するカオリちゃんの言葉に被せられたユイの補足情報を、俊はやんわり否定する。
「別に甘党ってほどでもねーよ…ほれ、食っとけ。後夜祭出るんなら腹ごしらえしといた方がいいぞ」
甘い香りを纏って差し出されたのは出来立てのクレープ。
「そうだよー!私たちも応援に行くから頑張ってねっ。はい、もいっこサービス!」
「お、おう…いただきます」
両手のクレープを平らげた後も行く先々で生徒や先生から声をかけられては食べ物をもらい、夕方になる頃にはタダ食いだけで結構腹が膨れてしまった。
「あー、満腹ー」
屋上庭園のベンチに腰掛けて胃の辺りを擦っていると、横からオミの手が伸びてきて同じ所を撫で始めた。
「パパですよー」
「…やめろ馬鹿。そこは胃だ。てか俺は男だ」
俺のパンチをかわして立ち上がったオミに合わせて、俺も立ち上がる。
「結構、いろんな人が応援してくれてんだな。ちょっと感激した」
空を見て、差す西日に眩しそうに目を細めるオミ。
「絶対、優勝しようぜ」
俺にはオミの方が眩しかったけれど。力強いオミの言葉に、しっかり頷いて拳を握った。

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