文化祭まで、あと2週間ちょっと。
俺たちは帰宅部なので準備らしい準備はないけれど、なんと言っても後夜祭の出場を控えているのでダンスの練習が追い込みだ。
オミは冗談抜きに優勝を狙っているのだから。
「後夜祭の出場者と賞品、発表されたぞー」
文化祭実行委員の声に、皆その手に掲げられた一枚の紙を見に集まって行く。
出場は俺たちを含めて5組。バンドからコントまで、ジャンルは様々で見事にかぶる所がない。
優勝者の賞品は…購買で使える金券5,000円分、と書いてあった。
「…なんだ、購買限定か」
「なんで?ノートとか昼飯代とかかなり浮くじゃん」
不満そうなオミの言葉に思ったままを返すと、オミは苦々しい表情で俺を見る。
「現金の方がよかった…」
「ま、健全に使えってこった」
いつの間にか横にいた俊がニヤリとオミの肩を叩いた。
「健全にねえ……ん?」
ふと。この前のことが頭を過る。
オミとのセックスが思った以上に体にこたえた俺は、ほとんど一日満足に動くことができなくなったのだ。ということは。
「…オミ」
「ああ…」

気づいてしまった。
文化祭が終わるまで、できないということに。

「考えてみればそうだよなあ」
放課後、屋上庭園での練習の合間にオミがぼやく。暑いと言ってTシャツを脱いだ裸の上半身に汗が光って、何となく思い出してしまう。この先もごく一般的な場面でオミの裸を見ることなんて多々あるだろうに、これが惚れた弱みというのか、好きな相手が近くに居過ぎるのもなかなか困ったものだな…と、考えながら苦笑した。
「ま、優勝目指して願掛けってことでいっか。賞品は購買の金券と、トモ。な?」
俺は結局、オミのこの笑顔に絆されてしまう。
絶対に勝てることなんてないんだろう。
よしやるかと伸びをしたところで、窓から顔を出した先生から木下服を着ろという声が飛び、俺たちはもう一度顔を見合わせて笑い合った。

そして、日の落ちるのが早くなり、練習でかいた汗が冷えて寒さを感じるようになってきた頃。
文化祭当日がやってきた。

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