「で、お前、そういうコトされて嫌だったからあいつを避けたワケ?」
俊に跡を指差されながら聞かれて、俺は首を横に振った。
「ならいいんじゃねーの?何も悪い事ないだろ」
「お前カンタンに言うけどなあ…」
分かってるんだろうか。俺もオミも男で、もう2年も友達やってきて、その関係が変化するって事の重大さを。俊が言うと本当に何でもない事のように聞こえるけど。
「じゃあ、あいつはカンタンに言ったんだと思うか?元々男が好きなんじゃないやつが、お前を抱きたいとかカンタンに言えるワケねーだろ」
それを言われて、ふと我に返った。オミはそんな事、軽々しく口にするタイプじゃない。昨日だって、結局最後まではしなかった。俺が怖がってると思って?
「あいつだってそれなりに悩んでたりすんじゃねーの」

お前だけが恋煩いしてる訳じゃないんだぜ?もうちょっと周り見る余裕持てよ

「え…」
「ほい、バトンタッチ」
痛いところを突かれて詰まった所で、俊は突然踵を返した。入れ代わりに出て来たオミの肩をポンと叩いて教室に戻って行く。
オミは俊がいた位置に立って、小さく伸びをした。
昨日の事を何か話した方がいいだろうか…そう思えば思うほど、何を言い出せばいいのか分からなくなってしまう。
「何、話してたの。奈良と」
「ん…別に、世間話…?」
「そっか」
目だけ動かしてオミの横顔を見る。こうしてオミを見る度に思う。この人が俺を好きだなんて、夢じゃないかって。俺を求めているなんて。
オミと抱き合ったら、もっと現実に近付くだろうか。もっと深く繋がったら…
「…あのさ、トモ。」
「うん?」
「俺、後悔したくないから。無理しないでくれよ」
昨日の事を、やっぱりオミは気にしてる。中途半端な俺の態度が原因で。
俺は黙って、何度も首を横に振った。
「してないよ。無理なんか。俺、ほんとに経験ないから…びっくりしたけど」
これだけは、ちゃんと伝えなきゃ。声が震えてるのが自分で分かったけど、そのまま続けた。
「俺も、したいから。オミと、全部……」
オミからは返事がなかった。
もしかして、聞こえなかった?
そう思ってオミを見ると、今まで見た事もないような顔をしていて。
嬉しそうな、困ったような、照れたような。
そんな顔でじっと見られたら、どうしたらいいか分からなくなってしまう。
「な、何だよ…」
「何っておまえ…」
オミは急に視線をうろうろさせてしばらく黙っていたけれど、ふっと短く息を吐いてからもう一度俺に向き直った。
「土曜日、うち来る?」
「え、うん…」
「…泊まってくよな」

ああ、ついに。
週末、「その時」を迎えるらしい。

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