「あれ?幸田早いじゃん」
「うん、ちょっとね」
朝練中の運動部員に声をかけられながら、俺は一人、廊下を急いだ。

『やる事があるから先に行く』

オミにはそうメールして、今朝は一人で登校した。もちろん、見え透いた嘘なんだけど。
きっとオミにも嘘だって分かってる。でも、どんな顔して会ったらいいか、いつもみたいにチャリの後ろに乗ってオミの背中にくっつくなんて…
オミだって戸惑ってるはずだ。

暇を持て余してバルコニーからぼんやり外を眺めているうち、他の生徒達が次々に登校して来る時間になった。無意識に自転車登校の生徒に目が行ってしまう自分にため息が出る。
「よお、今日は一人なんだな。あいつ休み?」
俊がするりと俺の横に滑り込んで来て、同じように外に目を向ける。こいつが来たって事は、オミもそろそろ着く頃かな…やっぱりそんな風に思ってしまう自分に、軽く舌打ちした。
「別に、早く起きたから先に来ただけ」
「何だよ、だからって一緒に来りゃいいじゃん。喧嘩でもしたか?」
「してねーよ」
「あっそ。でも、何もないって顔じゃねーんだよなあ…」
「な、何だよ……」
じろじろと俺を見る俊に身構えて、俺は小さく一歩下がった。俊は変にカンのいい所があるから、今までも俺がオミの事で悩んでいたりするとすぐに見抜いて指摘して来た。それはそれで助かってたけど、今回ばかりは俊にどうにかできる問題じゃない。
「どうせまたあいつの…ん?お?ちょっと朝矢君?」
「あ…っ」
シャツの襟を引っ張られて、とっさに押さえる。何を見られたのか、俊の表情からすぐに分かった。
「はーん…なるほどね。お前らついに…」
「しっ、してねえよっ!その…最後までは…」
反論しながら少し思い出してしまい、ごまかすように語尾が小さくなった。


昨日、あの後───
「触っていい?」
恥ずかしくて真っ赤になった俺の頬にキスをしながら、オミは勃ち上がった俺の中心に指を絡めた。
掌に包み込んで、ゆっくり、ゆっくり上下に擦られる。
「あ…あ…っ…」
俺は目をきつく閉じて、オミの肩にしがみついて与えられる快楽に身を震わせた。
時折耳にかかるオミの吐息の熱さにも、敏感すぎるほどに感じてしまった。
「痛くない?気持ちいい…?」
俺を気遣ってあまり強く擦らないのが逆にもどかしくて、でも自分からねだるなんてとても出来なくて、縋るようにオミの首に腕を回す。
「すごい濡れてるよ…」
「ぁうんッ…!は…」
先端に塗り広げるようにされて、一瞬達してしまったかと思う程感じて身体が跳ねた。すっかり感じ切っているのに気付いたのか、オミの手の動きが少しずつ速まって行く。
「あっ…あ…ん…んぁ、あぁ…っ…」
「やば…トモの声聞いてるだけで、イケそ…」
それはむしろこっちの台詞だった。色を含んだ低い声を耳元に吹き込まれて、溢れた先走りがさらにオミの手を濡らしてしまう。首筋に吸い付かれ、ぞくぞくと駆け上がる絶頂感に限界が近い事を感じた。
「あっあっ、あ、オミ、あ…っぁあ……!」
自分でするのとは比べものにならない快感の余韻から逃げられないまま、ぐったりと身体を投げ出した。
ぬるっ…という感触と共に、オミの手が俺自身から離れる。

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