これって、誘われてる?オミに……
俺は目の前のオミの胸にぺたりと手を置いた。筋肉に沿ってその胸板をそろそろと撫でてみる。
一緒に海に行った事もあるし、体育の着替えとか、オミの身体を見る機会は今までいくらでもあった。でも、当たり前だけどこんな目的で見る事なんかなかったから──均整の取れた…とでも言うんだろうか、こう言うのも何だけど、美しい。
「──何?」
「えっ、あっ、別に……」
上から微笑を含んだオミの声が降って来て、そんな必要はないのに慌ててしまう。
「その、ごめん、べたべた触ったりして」
「いいよ。何つーか…気持ちいい。変な意味じゃなくてさ」
オミは柔らかく笑って俺の後頭部を包むように髪を撫でた。こんな感じ…分かる?と言いながら、手は耳へ、首筋へ、頬へ、何度も移動を繰り返す。気持ちいいというより「心地良い」に近い感覚。
不思議だ。オミに触れられてあんなに胸が高鳴る事もあって、こんなに安らぐ事もあって。
いつの間にかオミに身体を預ける格好になって、大きな手が俺の背中を……
「ちょっ、ちょっと!」
思わず身を捩って自分の目で確認してしまった。オミの手が…シャツの中から素肌に触れているから。慣れない感触に鳥肌が立つ。オミはすぐに気付いてぱっと手を離した。
「気持ち悪い?背中触られるの苦手?」
「いや、そうじゃなくて……」
なんで、手が、中に。
切れ切れにそう問うと、オミは逆に疑問符を浮かべたような顔をした。
「何でって…元はと言えばトモから誘ってくれたように思えるんだけど」
違った?と聞かれて、少し考えてから首を振った。ここで止めてしまったら、なけなしの勇気が無駄になってしまう。きっかけは作れた。あとは……
「嫌だったらちゃんと言うから…オミの好きなようにしていい」
俺はオミの首に腕を回して唇を寄せた。
「了解」
近過ぎてよく見えなかったけど、唇が触れあう直前、オミの口角が上がった気がした。
お互いの出方を窺うように軽く何度も合わせて、どちらからともなく差し出した舌はあっという間に絡み合う。まるで我慢比べでもしているように、じっくりと長いキスを味わって行く。
「ん…んぅっ…」
その我慢比べは簡単に俺の方が負けてきて、無意識に引いた顎はオミに引き戻されて。襟元にかかった手が俺のシャツのボタンを外していくのが目の端に映った。
「ふ…オミ…っあ…!」
唇が離れて大きく息を吸い込んだのも束の間、首筋に這うぬるりとした感触に身を竦める。頸動脈をなぞるように這わされて、全身の動脈がどくどくと脈打つようだった。
「あ…あっ……」
オミの唇が下へ下へと移動するのに合わせて、ボタンを外されたシャツも脱がされて行く。オミにしがみついた両腕にひっかかるだけになったそれをそのままに、身体を反転させられてシーツに横たえられた。

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