おかしい。
絶対おかしい。
今までもずっと触れあう度にどきどきはしたけど、秋休み以降明らかに悪化(?)している。
オミには何か思う所があったようで、休みが明けてから積極的にスキンシップを計って来るようになった。学校の自転車置き場とか廊下とか屋上庭園の柱の影なんかで人目を盗んでキスしようとしたりというのはスキンシップの域を超えているんじゃないかと思う。
まず恥ずかしいのもあるけど、触られると本当に自然発火でもしそうに熱くなって…。
あまり変な態度を取ると周囲に何か勘付かれそうなので出来るだけ平然と振舞っているつもりだけど、それが余計に俺を消耗させていた。

「…あ、ごめん。間違えた」
そんなこんなで、文化祭に向けて続けていたダンスの練習もここ最近は特に身が入らない。
「疲れた?少し休もうか」
「うん…ごめん」
タオルで顔を覆って、深いため息と共に座り込む。オミは俺の隣に少し距離を置いて腰を下ろした。俺は汗を拭きながら顔を伏せていたけれど、じっと見られている気がして落ち着かない。人目を気にしなくて済む場所ならここまで神経質にならなくてもいいんだろうけど、ここは屋上庭園。北館からも南館からもまる見えの、学校のど真ん中だ。
「トモさ、もしかして俺が言った事気にしてる?」
ぴたり。
不意にオミが口にした言葉に、あからさまに固まってしまった。
やっぱりな、という小さな呟きが聞こえて、少し慌ててしまう。
「や、別に、気にしてるっていうか、いや気にしてないし…」
ダメだこりゃ。自分でも笑えるくらいどもってる。
「トモがしたくないならしなくていいって言ったろ。だからそんなに…」
「気にしてないって言ってんだろ!」
ため息まじりに言うオミに少しむっと来て、つい声を荒げてしまった。

本当は、気にしてる。
それはオミが思っているような事じゃなくて。
するかしないかを迷っているんじゃなくて。
早くオミの気持ちに応えたいと思う。好きな人と抱き合いたいのは俺も同じだから。
でも、怖い。やっぱり怖いよ。
オミがどんなに優しくしてくれても、痛い…んだろうし……
オミのためなら耐えられるって思うけど。
自分がどうなってしまうか分からない。どんなみっともない姿をオミに見せてしまうか。
それを見たオミが、俺から離れて行かないか……
自信がないんだ。
こんな気持ち、オミには分からないかな…

「お…俺が決心つくまで待つって言ったじゃんか…、すぐヤらないとしたくないって事になんのかよっ…」
口をついて出るのは、無理に強がって憎たらしい事ばっかりで。
オミが辛抱強く待ってくれてるのも、俺を気遣って「しなくてもいい」って言ってくれてるのも分かってる。なのに俺はどうして素直になれないんだろう…
「帰ろう。オミん家行く。で、すぐヤる」
「何だよそれ、何言ってん…」
「いいから!早く!」
もう、半ばヤケだった。

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