高校が夏休みに入るとオミと会える日ももちろん減って、その分オミの事を考える時間が増えた。
ユイとは付き合い続けているけど、最初にキスした時からこれといった進展はない。
夏休み…そろそろそういう時期なんだろうか。
男として興味がない訳じゃないけど、キスしても何も感じない相手とそういう事ができるとは思えなかった。

久しぶりに4人で遊ぶ日は、俺の家の近くの海岸に集まった。
「トモ君て華奢だと思ってたけど、結構筋肉ついてるんだね」
「そういうユイはぺったんこだな」
「ちょっと、セクハラー!」
ばしゃばしゃと水のかけあいをする俺達を、オミとカオリちゃんが笑いながら眺めている。
仲いいな、なんて思われてるんだろうな。
実際、付き合う前から仲はいいと思う。でも付き合ってからも俺の中ではその「仲の良さ」の度合いは変わっていない訳で。それをオミに誤解されるのが辛かった。
「まったく、胸はともかくこの脚線美は理解しなさいよ」
「え、脚線美?カオリちゃんのこと?」
「もうっ!」
もう一度俺に水をかけると、ユイはカオリちゃんの方を見た。
「確かにカオリはスタイルいいよね…5cmでいいから膝下分けてほしいって感じ」
「そんなら俺もオミに身長10cm分けてもらいたいって感じ」
何でこうも違うかねー、と苦笑していると、ユイがふと俺の腕をつついた。
「ねえ、トモ君。カオリのさ……あれ、キスマークじゃない?」
え?
キスマーク?
確かにカオリちゃんの首筋がうっすら赤くなっているようにも見える。
でも、まさか。
「ここに来た時はわかんなかったけど…ファンデで隠してたのかな」
嘘。
そんな訳ない。
「やだぁ…あの二人、もうそんな風になってんの?」
「え、でもオミは別にそんな事…」
「言う訳ないでしょ?いくら親友でもそこまではさ」
頭の中がぐるぐるして、思考が麻痺してくる。
オミがカオリちゃんと?
嘘だよ。嫌だ。
「なーんか先越されちゃったね」
ユイが俺の指を握ってくる。
言い方から察するに、ユイも俺とそういう事をしたがってるんだと思った。
本当にユイの事が好きなら、こんな甘えた目で見上げられたらまさしく据え膳なんだろうけど。
「…ばーか。俺はそういう事する為にユイと付き合ってるんじゃねーよ」
「それは…でも付き合ってるんだし」
できるだけ冗談っぽく返したのに通じなかったユイに腹が立って、俺は思わずユイの手を振り払った。
「付き合ってるから何だよ?そういう事がしたいんならしてくれるヤツと付き合えばいいだろ!俺に言うなよっ…!」
いら立ちに任せて一気に吐き出した。もうオミの事で頭がいっぱいで、何が何だか分からなかった。
ユイの目に涙があふれて、ぽろっとこぼれると同時にユイは俺に背を向けて歩き出した。
向こうでオミとカオリちゃんの驚いた声が聞こえる。
カオリちゃんがユイについていって、オミは俺の方に走って来て…
視界がぼやけて良く分からない。
「トモ、どうしたんだよ?」
分からない。分からないよ。
ふるふると首を振ると、俺の目からもぽろぽろと涙がこぼれ落ちた。
「ったく、泣くくらいならケンカなんかすんなよなあ…」
オミが俺の頭をごしごしと撫でてくれる。
ああ、オミに触れられればこんなにも胸が苦しくなるのに。
そのまま縋り付いてしまいたい。
けれどそれはできずに、俺は波打ち際に立ち尽くしてしばらく泣いていた。

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