「ちゃんと仲直りすんだぞ。こういう時は男の方から謝った方がいいからな」

オミにはそう言われたけど、あれから気が引けてユイに連絡を取っていない。
あんな事言うつもりじゃなかったのに。
『この前はごめん。会って話せないかな』
ようやく短いメールを送って、俺はベッドに突っ伏した。
好きな人に拒絶されて傷つけられるって、一体どんなに辛いだろう。
そう思うと胸が潰れそうに痛かった。

「まだ仲直りしてないって?トモ、ちゃんと謝ったのか?」
ユイとケンカした海岸で、今日はオミと日陰に座って話をしている。
「うん…メールした」
「だめだよ、電話とか直接じゃないと」
それができても根本的に解決しない事があるんだからしょうがないじゃないか。
俺は抱えた膝に顔を伏せた。
「そんな事だろうと思ってさ、カオリが根回ししてくれてるぞ」
「根回し?」
どうやらカオリちゃんは俺達が仲直りできるように、また4人で遊ぶ機会を作ろうとしてくれているらしい。
4人でいるとオミ達の方が気になって、この前の事もあるから気が重い。でも行くしかなかった。せめて仲直りして、これ以上傷つけない為にユイとは友達に戻ろう。
それが、こんな自分を好きになってくれたユイへの俺の答えだった。

***********************************************

待ち合わせ場所で顔を合わせると、重い空気がのしかかってきたようだった。
「トモ」
オミに背中を押されて前に出る。
「あの、この前はごめん…。あんな事言って、俺…」
「いいよ。私の方こそごめんね」
ユイは顔を上げてにっこり笑った。
「聞いたよー、トモ君私が帰った後泣いちゃったんだって?それ聞いたら許してあげようって思って」
聞いた?誰から?って、一人しかいないじゃんか。
俺は後ろでニヤニヤしているオミをじっとり睨んだ。
「俺はカオリにしか言ってないって。ユイちゃんにしゃべったのはカオリだよなあ」
「カオリちゃんは口が固いと思ってたよ…」
がっくりと肩を落とす俺を3人が笑う。ユイも笑ってる。良かった。安心した。
あとは………

ひとしきり買い物などをした俺達は、休憩がてらファミレスに腰を落ち着けた。
ユイが話を切り出したのはその時だ。
「あのね、トモ君。ちょっと聞いてほしい事があるんだけど」
「何?」
俺はあんみつを口に運びながら答える。
ユイの口ぶりは「荷物持って」とか「ちょっとおごって」とか、そういう時と同じようなものだった。
でも次にユイの口から出た言葉は思いもよらないもので。
「私、トモ君の彼女やめる」
え?
スプーンの中の白玉が滑って、器に落ちた。
「やめる…って…え…?」
「ちょっと、ユイちゃん、今日仲直りしたばっかじゃん。トモだってすごく悩んでて…」
俺の横からオミが口を出す。今日は俺とユイが仲直りする為にこうして集まったはずだ。その席でユイから別れ話が出るなんて、俺もオミも思っていなかった。

BACK←→NEXT


連載/短編/お題
サイトトップへ


広告が表示された場合はレンタルサーバーによるものです。

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送