オミに続いて俺にも彼女ができた事で、俺達は「凸凹カップル」と呼ばれるようになった。
背が高く大人っぽいオミと佐藤さん、小柄で童顔な俺と天野。
天野は俺より背が低くて、中学生だと言えばまだ通るかもしれないあどけない顔をしている。可愛いと言えば可愛い部類に入るだろう。
このまま天野を好きになってしまえば、オミへの気持ちを忘れられるかもしれない。
俺は天野といる時間をできるだけ増やすようにして、カップルらしく振る舞った。いつの間にか名前で呼び合っているオミカップルに対抗(?)して、俺もそうしてみたり。
でも、努力すればする程、虚しさが増長するような気がしてならなかった。
胸のなかにじくじくと広がるような苦い思いが、いつまでたっても消えなかった。

ひとつ良かった事といえば、佐藤さん―カオリちゃんと天野―ユイが思った以上に仲良くなった事だ。オミと俺と同じで一見タイプの違うように見える2人は、俺達を介して接する機会が多くなるうちにお互いを気に入ったらしい。
「カオリってちょっと近寄りがたいかと思ってたけど、ほんとはすごく優しくていい子なんだよ。あの木下君が彼女に選んだのも分かるなあ」
ユイがそんな事を言っていた。
2人が近づいた理由には、俺に彼女ができてからもオミが俺の送り迎えをやめなかった(ので残された2人がいつも一緒に帰るはめになった)事もあった。
「男同士、女同士の時間ってのも大事なんだぜ。恋をしてても友情を捨てちゃおしまいだからな」
オミはそう言って2人を納得させてしまった。(だいぶ苦笑されていたけれども)
それはそれで嬉しかったけど、「恋をしてても」とオミが言ったのが引っかかった。
やっぱりオミはカオリちゃんの事が好きで……
「おまえら、ちっちゃくて可愛くてお似合いだよなあ。最近似てきたんじゃねえ?」
オミがチャリをこぎながら振り返って笑う。
「お似合いはそっちの方だろ!それより前見てこげよ、あぶねーから、ああほら!」
「うわっと」
電柱を避ける為にぐんとカーブを切ったチャリの後ろから振り落とされそうになって、俺はつかまるフリをしながら力いっぱいオミの背中を抱きしめた。


ほんとは俺、おまえの事が好きなんだ。
おまえとお似合いって言われたいんだよ。


広くてあったかい背中に、そっと呟いた。
オミの上着に涙が染みないように気をつけて。


変わらなかった事がもう一つある。
オミがラジカセをかついで千葉まで遊びにくる事。
もちろん以前のように俺達だけではなくて、それぞれの彼女込みで4人で遊ぶようにはなっていたものの、彼女たちからしてみれば不満があるはずだった。
実際ユイに「たまには2人でどっか行かない?」と言われている。
そりゃそうだよな…と思う。彼女達には悪いけど、俺だって本当はオミと2人で遊びたい。好きな相手と水入らずで過ごしたいのは誰しも同じだと思うから、ユイの気持ちもよく分かった。
「今度ユイの行きたいとこ行こうぜ、2人で」
「ほんと?やったあ〜トモ君やさし〜♪」
嬉しいからコレあげちゃう、とチョコを一粒もらって、女はいつもプチおやつ持ってるよなあとからかいながら口に放りこんだ。
「…ね、トモ君」
何、と言おうとした時、ユイの顔がふっと近づいた。
軽く触れて離れたそれは、俺にとってのファーストキス。
いつか好きな人と、と夢見ていたキスだったのに、チョコみたいに甘くはなかった。

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