■第二章

相変わらずの片思いながら、オミに恋して早2年。
幸い(?)学力が同程度だった俺達は、現在同じ高校に通っている。
オミに合わせて選んだ都内の高校。
受かった時も嬉しかったけど、同じクラスだと分かった時は涙が出るほど嬉しかった。
しかも、一人暮らしを始めてチャリ通学になったオミは毎朝学校の最寄り駅で俺を拾って、特に用事がない限りは帰りも駅まで乗せて行ってくれるという大サービスで。
ゴールデンウィークが明ける頃には、俺達は学年でも有名なコンビになっていた。


雲行きが怪しくなって来たのは、俺達の周りに女の子が集まるようになってからだった。
正確には俺達、というよりオミ目当てなんだと思う。オミは入学当時からすごく目立っていて、あちこちからあの子がオミに惚れたらしいなんて話も聞こえ始めていた。
俺みたいなちんちくりんがいつもつるんでいる事で、オミはかなりガードが緩いと思われたんだろう。実際オミは人を変な事で判断したりしないで、誰とでも仲良くなれるタイプだった。
そして今日も、弁当を食べ終わってしゃべっていた俺達の周りは騒がしい。
「木下君と幸田君てさ、全然違うタイプっぽいけどすごい仲いいんだねー」
「意外だよねー」
うるさい、女子ども。
まるで俺が邪魔だと言われているみたいで、居心地が悪いったらなかった。
「みんなトモの良さを分かってないんだよ。何でこいつが俺の親友なのか考えてみろって」
オミ本人がそうフォローしてくれるのが唯一の救い。
「木下君の方から声かけて知り合ったんだっけ?」
「そう、俺の見る目は確かだったってこと」
「やだー、それってナンパ?」
キャーっと黄色い声があがる。だからうるさいってば。
俺は愛想笑いを浮かべつつ、心の中で悪態をついた。
誰にでも優しいオミがこの時ばかりはうらめしい。そこが大好きな所でもあるのに。
「俺、喉乾いたから自販行ってくるわ」
自分の心の汚い部分を見続けるのが嫌で、俺は席を立った。

休憩や勉強の為に開放されている多目的ホールで、俺は缶ジュースを飲みながら残りの昼休みを過ごす事にした。
もしかしたらオミが追って来てくれるかも…と思ったけど、そうじゃないらしい。
そりゃそうだ。あいつは俺の事、友達としてしか見てないんだから。
ちょっとでも期待した自分が情けなくて、余計に凹んだ。
「よお。相方が色男だと大変だな」
向かいに座ったのは同じクラスの奈良俊介だった。高校に入って早々仲良くなったやつだ。無条件にいいやつ。
「うらやましいなあ、毎日ハーレムで」
俊はそう言って、テーブルに突っ伏すようにだれている俺の額を指でつつく。
「代わってやりてえよ。俺クラスの女子に興味ねーし……あ」
待て。俊と代わったら、「いつもオミと一緒」いう俺の定位置が。
「うわ、贅沢。じゃ代わってくれよ、マジで」
「ダメだ。やっぱり代わんね」
「何だとー。さては興味ないとか言って、誰か狙ってんな?」
「違げーよ、バカ」
バカバカしい会話で少し気分を晴らしていると、俊の後ろから俺に声がかかった。
「幸田君、今ちょっといい?」
これまた同じクラスの佐藤香織だった。女子の中では背が高めで、割と美人な方だと思う。俺とは普段ほとんど接点がない彼女が何の用なのか、とっさに想像がついた。
「あ、俺外した方がいいよな?」
「ごめんね、奈良君」
俊と入れ代わりに、彼女が俺の向かいに座った。

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