■プロローグ


自分は恋愛には淡白な方だと、俊介は思っていた。

初めて女性と関係を持ったのは中2の時で、同級生の姉から気に入ったと言われて流されるままに応じた。
その時思ったのだ。「こんなものか」と。
思春期の体は本能的に反応を示し、行為を果たすのに問題はなかったが、心が全く動かなかった。

その後も数ヶ月に渡り、両親が共働きのその家−同級生が部活で帰宅しないうちに−に呼ばれては何度も行為を重ねたが、自分にとってはただそれだけの相手だった。
「俺、あんたと付き合ってる訳じゃないし」
ある日そう言うと物凄い剣幕で彼女は怒り、涙を流しながら俊介を叩いた。
以来彼女から誘われることはなくなり、関係は自然消滅した。
寂しいとも、惜しいとも思わなかった。
俊介にはあの時の彼女の涙の理由は理解できないままだ。

それからも、俊介は自分を好きだという相手と暇つぶしのような感覚で付き合いを続けてきた。自分から関係を持つように行動することはなかったが、誘われれば拒むこともなかった。
付き合いを続けるうち、女たちは自分の思い通りに「彼氏」としての振る舞いをしない俊介に不満を言い、時には泣き、それでも態度を変えない俊介から次第に離れて行った。

「そーいえば、最近連絡来なくなったな…ま、いっか」

去る者は追わない。それがこれまでの俊介の「恋愛」だった。
それを繰り返していた最中に、彼と出会う。
彼は俊介の中の何かを、確実に壊して行った。

俊介は言い続けた。

「俺はあんたの彼氏じゃないから」

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