■エピローグ

年が明けて数日が経った日、俊介は松田と初詣に来ていた。
元旦までは松田が仕事に出ていたこと、俊介が過度の混雑を好まないこともあり、三が日を過ぎたあたりがちょうどいいということになったのだ。
「朝矢君、風邪だったんだよね?治ったかな?」
「彼氏が見舞いに行ったらしいから一発だろ」
年末に朝矢に電話をして恋愛の悩みが解消したことを伝えると自分のことのように喜んで、それなら俊介たちと自分たち、皆で一緒に初詣に行こうと言い出した。言い出しっぺは年が明けると熱を出して寝込んでいたらしいが、俊介が木下に一報入れてやったら翌日にはすっ飛んで行ったらしいので、問題ないだろう。
問題はといえば、俊介が射止めた相手が松田であることを朝矢に明かしていないことだ。自分が男と付き合っているくせに俊介の相手は女性だと思い込んでいる朝矢を、いい機会だから驚かせてやろうと思った。
「朝矢君にまた会うの、楽しみだなー」
「マッチーと俺を気まずいことにしてくれた張本人だけどな…」
朝矢が松田に「俊介には好きな人がいる」と言ったことを松田が思い違いしたのが、あの日起きた事件の原因だ。そのことも後々ネタにしてつついてやろうと思っていると。
「ごめんー、ちょっと寝坊したー!」
遠くから朝矢が駆けて来るのと、それを追ってくる木下が見えてきた。
「木下んち寄ってきたのか?」
「うん、荷物置いてきた」
「始業式までお泊まりかよ。どうせイチャイチャしてて遅れたんだろ」
「ちょっと、俊」
俊介の減らず口に、松田のげんこつが降って来る。いってーな、と口を尖らせた俊介を尻目に、松田は初めて会った時のような笑顔で朝矢に話しかけた。
「朝矢君、あけましておめでとうございます」
「あっ、松田さん!?」
朝矢は思わぬ再会に目を丸くすると、何故来ることを言ってくれなかったんだ、知っていればこの前のお礼を考えてきたのにと俊介に文句を言った。
「だっておまえ、初詣の時に紹介してくれって言ってただろ」
朝矢は確かに言っていた。初詣で俊介の恋人に会うのが楽しみだと。そこまで言ってようやく気づいたのか、朝矢は大きな目をますます大きくして、俊介と松田の顔を見比べた。
「え、じゃあ、松田さんが、え、うそ…!」
混乱している朝矢から完全に置いて行かれている木下は、その間に松田から「はじめまして」と挨拶されて、柄にもなく緊張しているようだった。
その様子を見て、俊介はふふんと鼻を鳴らす。

「キレーな人だろ。俺の…いちばん大事なひと」

自慢げに言った俊介は、誰もが幸せそうだと思うような顔をしていることに、まだ自分で気がついていない。
色違いの揃いのマフラーを巻いて松田と二人、並んで歩く後ろ姿を見ながら、朝矢と木下は顔を見合わせて笑った。

Fin.


「俊とマッチー」本編はこれで終了となります。約1年の更新期間でしたが、お付き合いありがとうございました!こ、これでやっとラブラブな二人が書ける…照れ照れでヘタレな俊介が書ける…!
続編、番外編も考えておりますので、今後ともよろしくお願い致します♪ clap

BACK←
スピンオフトップへ


長編/短編/お題
サイトトップへ


広告が表示された場合はレンタルサーバーによるものです。

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送