5代目拍手お礼小説 25000hitキリリク
yumi様より「トモオミラブラブ度アップ(18禁)」トモ嫉妬・誤解絡み


夕飯はオミが冷蔵庫の中のもので器用に作ってくれて、二人でくっついて食べた。
本当は何か買いに行くとか食べに行くとかするはずだったものの、オミが俺の体の負担を考えてくれて。
それ以上に、離れ難かった。
片時でも離れたくなくて、ずっとオミに触れていたくて…

「珍しいな、トモがこんなに甘えて来るなんて」
相変わらずくっついてお茶を啜っていると、俺の肩を抱いているオミが嬉しそうに言う。
いつもはあまり自分から甘えられなくて、オミからの接触に便乗しているような感じだから、本当に珍しいと思っているんだろう。
自分でもどうしたのかと思うけど、原因はちゃんと分かっている。
「…ほんと、ごめんな。心配かけて」
こつ、と頭がぶつかる。
「ううん、いいんだ…俺も、悪かったと思ってるから」
「? なんで?」
覗き込まれて下を向く。手の中のカップを所在なく回すと、俺の心の中みたいにお茶の表面が揺らいだ。
オミは俺の手からカップを取ってテーブルに置くと、何も持つ物がなくなったその手を優しく握って、俺と向かい合った。
真剣に話をする時に、オミはこうする。鼓動が少し早くなった。
「トモは何も悪くない。なんでそう思うの?」
「俺…、オミが喜ぶようなこと何もできてないから…」
「…それで、俺がカオリに乗り換えたと思った?」
こく、と頷く。

せっかくオミが好きだと言ってくれて付き合ったのに、俺がずっと受け身だから、愛想を尽かされたのかと思った。
オミの気持ちに応えられていないんじゃないかと。

ぎゅ、と抱きしめられて胸がいっぱいになる。
「だから、さっき頑張ってくれたんだ?」
もう一度頷くと、オミの笑う息が首筋をくすぐった。
「嬉しい。トモが俺のために考えてしてくれて」
少し体を離して、軽くキスして、また抱きしめて。
その後は、しばらく会話はなかった。
目を閉じて互いの体温と鼓動を共有する。温かくて、まどろむような心地よさだ。
このまま溶けてひとつになってしまえばいいのに。
ふと涙が出そうになって、数度目を瞬かせた。

「…そろそろ、帰らないと」
時計なんて見たくなかったけど、時間を気にしなければいけない立場だ。
早く大人になりたい、そう思いながら体を離す。
仕度をして靴を履いても、どちらもなかなか扉を開けようとはしなくて、狭い玄関でまたしっかりと抱き合った。
甘いキスを交わして、ようやく外に出る。温まった体に寒風が容赦なく吹き付けて、反射的に首をすくめた。
自転車に乗ればすぐの駅までの距離を、どちらともなくそのまま歩き出す。
ぽつり、ぽつりと他愛無い会話をしながら、数メートルおきに街灯が淡く照らす道をゆっくり進んだ。
この道を、カオリちゃんもオミと一緒に歩いたのか。オミの家族以外は俺しか知らなかった道を。
二人ともそのつもりはなかったとは言え、思い出すと少し眉が寄った。
どうやらまだ、俺は大人にはなれないらしい。
コートのポケットに入れていた手を出してそっとオミの指に触れると、横から俺を見下ろす驚いた顔はすぐ笑みに変わって、冷気に縮こまりかけていた指先は温かい掌に包まれた。

また明日、と短い挨拶を交わして改札を抜ける。
ホームへ続く階段を上がる直前に振り返ると、オミが小さく手を振っていた。
仕事帰りのビジネスマンで混み合う電車に乗り込んで、さっきまで握られていた手がポケットに入れたままのもう片方よりも温まっていることに気がついた。
冷ましてしまったら勿体ないと、その手もポケットの中に入れる。
まるで芸能人と握手して手を洗わないと言い張るファンのようだけど、俺は一度きりじゃなくてまた何度でも触れ合う事ができるんだ。
帰宅してからもその温もりは失われることはなく、オミが一緒にいるような気持ちで眠りについた。


翌朝、学校の最寄り駅に着くとオミはまだいなくて、そわそわしながら到着を待った。
立ち止まっている俺の横を、クラスメイト達が挨拶しながら通り過ぎて行く。
「おー、幸田。相棒待ってんの?」
「おうっ」
オミを相棒と呼ばれて、答える俺は笑顔になってしまう。
時折伸び上がってオミの来る道に目を配っていると、カオリちゃんが声をかけてきた。
「おはよう、幸田君」
「はよー。大丈夫だった?昨日」
「やだー、大丈夫に決まってるじゃなーい!あはは」
明るく笑う姿に、昨日先輩を吹っ飛ばした豪快な平手打ちを思い出してちょっと冷や汗が伝った。
「よお、珍しい組み合わせだな」
1本後の電車だったのだろう、俊が俺たちを見て珍しく驚いた顔を見せる。
「そうかもね。いつも和臣が一緒だから、幸田君とふたりで話せるってあんまりないかも」
「あ、女子もそう思ってんだ?だよなー」

そこへ。
ちょっとくたびれた自転車を全速力でこぎながら。
「トモー!」
ちょっと恥ずかしいぐらい、大きな声で俺を呼びながら。
「オミ!」
待ち人、来る。

オミの愛機は少し手前からブレーキの音を響かせて、俺たちの前で止まった。
俊が大袈裟に耳を塞いで、
「っるせーなー。油さしとけよお前」
「はいはい、ってか何でいんだよ。カオリも!ったく皆してトモにまとわりつきやがって」
「自分が一番まとわりついてるくせにねー」
「ぐっっ… ほらトモ、行くぞ」
カオリちゃんのツッコミにオミは反論できない。俺の腕を引っ張ってさっさと後ろに乗せると、そのまま逃げるように急発進した。
オミにしがみつきながら、俺は思わず笑ってしまう。
「カオリちゃんには頭上がらないよなー」
「だってお前見ただろ昨日…!ああはなりたくねーって」
ちらと後ろを向いたオミの顔は見事に強張っていて、余程昨日の光景がトラウマになったと見える。
今度からカオリちゃんを盾にすれば、オミは俺の言うことをなんでも聞いてくれるかもしれない。想像してまたちょっと笑った。

いつもより勢いよくペダルを踏んで、俺たちを乗せた自転車は登校中の生徒達を次々と追い越していく。
と、前方に何か見つけたのか、オミはまたブレーキを踏んで速度を緩め始めた。
横付けしたその場所には。
「おはようございます」
無駄に爽やかな笑みを浮かべてオミが挨拶したのは、例の先輩。昨日オミを殴ろうとして、カオリちゃんにふっとばされたあの人だった。
「あっ、お前!…なんだよ、何か用か」
先輩も昨日のことを思い出したのか、気まずそうな顔をして後ずさる。
オミは笑みを崩さないまま、
「いや、ただ…勘違いされたままじゃ困るんで」
と言うと、後ろにいる俺の肩に腕を回して。
「俺、コイツが一番大事なんで。それでカオリと別れたんですよ。だからカオリとは何もないです」
「なっ…」
突然の宣言にぽかんとする先輩と、真っ赤になる俺。
「なんで、恨みっこなしですよ。それじゃ」
さらっと流すと、オミは再びペダルを踏み込んだ。慣性の法則に従って後ろに流れそうになる上半身を慌ててオミにくっつけて、赤くなった顔を隠して抗議する。
「いきなり何言ってんだよ…!」
「本当のこと言っとかないと、あの人勘違いしたままだろ?良くないって」
そういうことじゃない!と思ったけど、堂々の交際宣言(?)に満足したのか、オミは妙に機嫌がよさそうだ。
(全く…)
文句は言いながらもまんざらでもない気分で、血の上った顔の熱を冬の冷たい空気で冷ましながら、俺はオミに掴まる腕にちょっとだけ力を込めた。

Fin.

最後までお読みいただきありがとうございました!
面白かったよ!という方、ご感想いただける方はぽちっとしていただけると嬉しいです。
clap


BACK←


長編メイン/スピンオフ/短編・拍手お礼/お題
サイトトップへ


広告が表示された場合はレンタルサーバーによるものです。

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送