文化祭が終わって10日ほど経った土曜、トモはオミの部屋に遊びに来ていた。
遊びにというより、泊まりにといった方が正しい。トモの荷物には着替えなどのお泊まりセットが入っている。
初めて泊まったのは初Hの時、次に泊まったのは2回目だから、おそらくこの日が3回目になるはずだ。
顔を合わせた時から互いに何となく意識していたが、だからといって確かめる訳にも行かずに時間が過ぎて行く。
平静を装いつつも、オミの頭の中は俊介から教えられたことでいっぱいだった。
何度も反芻し、シミュレーションを試みる。
…正直なところ、全くもって自信がない。俊介の言う通り、本当に自分が下手なだけでトモを満足させることができなかったら。
上手く行かないケースばかり考えてしまい、オミは思わず大きな溜め息をついて手で顔を覆った。
「オミ?大丈夫か?」
トモがオミの肩に手をかけて覗き込んでくる。
はっと顔を上げると、心配そうな目をしたトモが額に掌を乗せてきた。
「熱はないみたいだけど、あ…今週ずっとトイレから帰ってこない時あっただろ?お腹にくる風邪とか…」
昼休みに俊介を捕まえて性教育を受けていた日のことだ。一人で教室を出るためにトイレだと言ってしまった手前、ずっと帰らなかったのはまずかったかもしれない。
しかし、本当のことなど言えなかった。
「大丈夫、ごめんな」
ぎゅっとトモを抱きしめて、自分の気持ちを落ち着かせる。
(慌てるな俺)
もともと、セックス込みでの付き合いでなくてもいいと言ったのは自分の方だ。
それでも受け入れてくれたトモを思うと、少しでも悦くしてあげたい…と思うのは、結局はエゴなのだろうか。
「好きだよ、トモ」
確かめるように口に出すと、おずおずと背中に回される腕が愛しい。
「トモは、優しいな…」
うなじに鼻先をつけ、かり、と小さい噛み跡をつけた。

それからしばらく、トモを膝の上に乗せて撫でたりキスしたりといちゃいちゃして。
「…あ」
時折、無意識なのだろうか、気持ちよさそうな声を出すトモに反応しそうになる下半身を必死に抑える。
トモは小柄なこともあってか可愛らしい顔立ちをしていて、年齢より少し幼く見えるところがある。しかし自分と付き合い始めて、特に体を重ねてからは、もともと持っていた雰囲気に色気が加わって、伏せた目やシャツの襟元から覗く肌にどきりとさせられることも少なくなかった。
こんな風に見ていると知ったら、軽蔑されるだろうか。
「オミ…?」
考え込んで動きを止めたオミをやはり体調が悪いと思ったのか、トモがまた心配そうな顔をした。
「ほんとに大丈夫なのか?少し横になった方が、」
「大丈夫だから。もし病気だとしたら…恋煩いかな」
そう言って笑うと、トモは猫のような目をぱちくりさせて首を傾げた。

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