昼休みの屋上庭園の片隅。
季節はどんどん冬に近づいて、陽射しが降り注いでいても空気が冷たい。
そこに、さらに冷えた眼差しの奈良俊介がいた。
「テメー俺にケンカ売ってんのか」
「違うって。真面目に聴いてんだよ」
俊介の前にいるのは、木下和臣=オミ。幸田朝矢=トモの恋人である。
トモを巡って何かとぶつかることの多い二人だが、今はそのトモがいない。
珍しく、オミが俊介を呼び出したのだ。

「じゃあ真面目に答えてやるよ。お前がヘタなだけだ。お前じゃ朝矢を満足させんのは無理だ。残念だったな」
俊介はにこりともせず、冷たく言い放つ。
(冗談じゃねーっつの)
寒いのに外に呼び出されて何かと思えば、オミは「セックスの時、トモを後ろでいかせるにはどうしたら良いか」と相談してきたのだ。
少なからずトモに好意を持っていた俊介にとっては、たまったものではなかった。
ふん、と鼻を鳴らしてオミを見遣ると、さすがに俊介の言い様にむっとしたのか、憮然とした表情になっている。
「っていうか、お前らの下半身事情なんて知るかよ。アホか。俺に聞くな」
これ以上言い合いになるのも嫌で、俊介はやれやれと溜め息をつくとその場を立ち去ろうとした。
と、腕を掴まれ引き止められる。
「待ってくれ。頼む。お前しかこんなこと聞ける奴いないんだよ」
「あのなあ…」
確かに、二人の関係を知っているのは自分しかいない。だからと言って、男のクラスメイトにそんなことを聞いてどうにかなると思ったんだろうか。
実を言えば、俊介には現在進行形で同性のセフレがいる。
それをオミが知っている訳もないが、オミの疑問に何らかの答えを示してやれないこともなかった。
でも、ただで教えてやるのは癪だ。
俊介はようやく笑みを見せると−随分と「悪い」笑みではあったが−オミに向き直った。
「しょーがねーな。いいこと教えてやるから、実践したらどうだったか聞かせろよ。詳細にな」
こいつにだけ、いい思いをさせてたまるか。だったらせめてこいつの口から聞かせてもらおう。
朝矢がどんな風に乱れて、絶頂を迎えるのか。
オミは一瞬ぐっと引いたが、
「わかったよ…」
最終的には折れて、小さく頷いたのだった。

その頃の教室。
「もー、オミの奴まだかよー。腹でも壊してんのかな…。暇なのに俊もいねーし〜」
オミがトイレに行っていると信じ込んでいるトモが、机に突っ伏してむくれていた。
「あれー、トモ君ひとりなの?一緒におべんと食べようよ」
元カノのユイが、カオリ(こちらはオミの元カノ)と昼食を取り始めるところで誘いにきた。
どちらも形だけの短い交際期間ではあったものの、友人関係は問題なく続いている。
「オミが戻ってこなくてさー…まいっか…」
誘いに応じて席を立ったトモだったが、昼休み終了間際までオミは戻ってこなかった。

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