翌日からもオミとの「無言の登下校」が続いた。正直かなりきつかったから逃げてしまう事もできただろうけど、オミと接しない事の方が辛いように思えて、それはどうしても出来なかった。
「よお、おはよーさん」
登校すると下駄箱で俊が待っていて、俺を引っ張って行くと言うパターン。
そのままオミと俺は、下校までほとんど顔を合わせない。
そして帰りは何か言いたげな俊に挨拶をして、オミのチャリの後ろに乗る。
月曜からずっとそれが続いて、週の最後−金曜を迎えた。

「朝矢さあ、明日どーすんの?いつもあいつと遊んでんだろ?」
「あ…」
俊に言われて気が付いた。明日は土曜。土日両方とは言わなくても、どちらかはほとんど必ずオミが来ていた。今度の週末はどうなるんだろう。こんな状態じゃ……
「…わかんねーや」
正直、本当に分からなかった。今の状態で自分から声をかけるのは無理そうだったし、かと言ってオミがいつものように遊びに来るとも思えなくて。でも、毎日の送り迎えを変わらずにしてくれるって事は、来るだけは来るつもりなんだろうか。それで元に戻るんなら嬉しいけど。
「じゃあさ、明日俺にちょっと付き合ってくんない?買い物」
俊が俺の考えを遮った。……どうしよう。気分転換にはなるかな…気分転換なんて言ったら俊には悪いけど、そこそこ仲はいいのに一緒に出かけた事なんてなかったから、たまにはいいかもしれない。
「ああ、いいよ。昼飯は俊のおごりでな」
「『いいよ』以外は聞かなかった事にしとく。じゃ、言いに行くか」
突然歩き出した俊に腕を引っ張られて、俺は転びそうになるのを踏み止まった。
「言いに行くって、何」
「え?あいつにだよ。一応言っといた方がいいだろ」
「ちょっ、何勝手に…いいってば、俊…!」
抵抗むなしく、ずるずると引き摺られてオミの前まで来てしまった。俊が声をかけたけど、俺はオミの顔が見られない。
「明日、朝矢借りるぜ。ちょっと買い物付き合ってもらいたいんでね」
「ああ…トモがいいんなら、俺は別に」
本来なら何でもない事なんだと思う。別にクラスメイトと買い物に行くぐらい、わざわざことわる事でもないんだから。それでも、どことなくそっけなく聞こえたオミの返事が、俺の心に小さな傷をつけた。

*******************************************

俊との買い物は色んな店をぶらつくだけぶらついて、ファーストフード店に落ち着いた。
「何も買ってないじゃん。これからまたどっか行くのか?」
昨日言った通り俊のおごりになったので、遠慮なくデザートつき。そのアップルパイを食べながら、疑問に思った事を聞いてみた。「買い物に付き合ってほしい」とは言ったものの、俊はどの店もあれこれ手に取るばかりで何を買う風でもない。
「いや、買い物つっても欲しい物があった訳じゃないんだよね。どっちかっていうと朝矢と話したかっただけ」
俊も自分のアイスをスプーンでつつきながら答えた。
話ならこの1週間、普段の何倍もしている気がする。−オミと話していない分。オミが親友なら俊は悪友とでも言うべきか、俊の話は下らなくてバカっぽいけど面白くて飽きない。もともと話好きというのもあるんだろうけど、最近は特に…
「俊、もしかして俺に気遣ってる?」
「別に今さら気ぃ遣う気もねーけど、気にはなるだろ。お前らおかしいもん、今週」
そんなの俺が一番よく分かってるよ。
でも、だからどうしろって?
俺には何もできない。今のオミに何かして、拒絶されるのが怖い。
オミの優しさにずっと甘えてきたんだ。初めて会った時からずっと。
「俊、つっついてないで食えよ。アイスが可哀想じゃん。いらねーんならもらうぞ」
話を逸らそうとして俊のデザートグラスに伸ばした手を、逆に掴まれた。
「何だよ、食うの?」
「お前さ、」
俊の視線が真直ぐに俺を捉えた。

「いつから好きなの、あいつの事」

周囲の音が全て消えた。
何て言った?今…… 何で知って……
こめかみの辺りを、嫌な汗が一筋伝う。

BACK←→NEXT


「いらねーんならもらうぞ」は、某学園もの漫画の某先輩の名セリフです(笑)

連載/短編/お題
サイトトップへ


広告が表示された場合はレンタルサーバーによるものです。

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送