■第一章

今日も一日よく晴れてた。
真っ赤な夕焼け空がまぶしい。
そのまぶしさをさえぎるように俺と空の間に入ってきた、もっとまぶしい笑顔。
「お待たせ。帰ろうぜ」
俺の大好きな、オミの笑顔。
「あれ、残ってんのトモだけ?みんなは?」
「日が暮れる前に帰りたいってさ」
日直の仕事をサボろうとして先生につかまったオミは、さっきまで職員室でしぼられていた。
俺はクラスの奴らとだべりながらオミが戻ってくるのを待ってたんだけど、あんまり長いのでみんなは帰ってしまったって訳で。
「やっぱりトモだけだよなあ、最後まで待っててくれるのは」
オミは顔の前でありがたそうに手を合わせる。
「そりゃあ…」

待ってないと一緒に帰れないじゃん?
1人だけ残ればオミを独占して帰れるし。
何の為に同じ高校受けたと思ってるんだよ。

心の中ではそう思ってたけど、
「まあ、友達として当然だろ?」
手を腰に当ててふんぞり返ってみせる。
オミはそんな俺に「へへー」なんて頭を下げたりして。
こういうバカみたいなやりとりだって、俺には楽しくてしょうがない。
「じゃ、お礼はラーメンおごりでいいからな」
「へっ?」
俺の一言に、オミが目を丸くして顔を上げた。
「待ってたら腹減っちゃったよ。食って帰ろうぜ」
確かに、腹も減ってる。
でもそれ以上に、このまま帰るのがもったいなかった。
オミと少しでも長く一緒にいたくて。
「負けるよなあ、トモには」
「よし、決定!」
何で俺がこんなにテンション高いのか、オミはきっと知らない。



「やっぱここのラーメンうまいよなー。ごちそーさん!」
オミと一緒に食べたから、腹もいっぱいだけど胸もいっぱいだよ。
なんて言えないけど。
「遅くなっちゃったけど大丈夫か?トモん家遠いのに」
「だーいじょぶだって。うちの親ちょっと過保護だから、たまには心配させた方がいいんだよ」
オミは高校に近い方がいいからと実家を出て、学校からチャリで20分くらいの所にあるアパートで一人暮らしをしている。俺は千葉の実家から。家族は好きだけど、あまり干渉されるのはちょっと煩わしい。高校生ってのはそういうお年頃だ。だから奔放が許されているオミがうらやましかった。
でも、自分が一人暮らしをするとして、家事がつとまるとも思えない。料理なんかした事ないし、掃除も洗濯もめんどくさい。
そういえば、オミはいつもどうしてるんだろう。一人で全部やってるんだろうか。できるもんなの?それとも誰か……
イヤな考えが頭を過ぎって、慌てて振り払った。
「ほらトモ。駅まで乗せてってやるよ」
オミはチャリにまたがると後ろを指差した。
そうだよ。考え過ぎだ。
俺って単純、と思いながらも、にやける顔を隠すようにしっかりオミの背中にしがみついた。

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