「あーもう、思い出しただけで勃ちそう…」
「げっ、てめーふざけんなよ、一緒にいる俺まで変態だと思われんだろーが」
まだ話したそうなオミをぐいと押しやって強制終了すると、俊介は立ち上がって空き缶をくずかごに投げ入れる。
熱々だった汁粉を冷ましながら全部飲み切るほどの時間、他人のセックスの話を聞かされていたのかと思うと軽い目眩がした。
「もういい、十分聞いた。そこまでできたんなら上出来じゃねーの、よかったな」
とりあえず教えた側としては合格点を出してやり、俊介はオミを置いて歩き出す。
オミがああまで幸せそうに語るのは、二人の間に確かな気持ちがあるからなのだろう。男同士のセックスは生産性を伴わない。何故するかと問われれば、二人は間違いなく「愛しているから」と答えると思う。
(愛ねえ…)
一瞬、自分のセフレの顔が浮かんだが、溜め息で吹き飛ばした。

一人先に教室に戻ると、トモが痺れを切らした様子で駆け寄ってきた。
「なあ俊、オミ知らね?トイレかと思ったんだけどいないんだよー」
「さあ…どっかで浮気でもしてんじゃねーの」
冗談めかして言ってやればぷうっと膨れるその頬を、空気をつぶすように突ついてやる。
高校生らしからぬ幼さを見せるこのクラスメイトが、本当にさっきオミから聞いたような変化を見せるんだろうか。興味はあるが、天地がひっくり返りでもしない限り自分が直接それを確かめることはできないだろう。
「あっ、オミ」
時間をずらして戻ったオミを目敏く見つけ、トモは今度はそちらに駆け寄って行く。
待ってたんだ腹が減ったと猫のようにまとわりつくトモに謝りながらも優しい笑みを浮かべるオミを見て、俊介は短く息を吐いて口角を上げた。
(ま、お似合いだな)
汁粉で膨れた腹をさすって、昼休みの残り時間を睡眠不足の解消に充てるべく、机に伏せて目を閉じた。

「オミ、なんか気持ち悪い。何ニヤニヤしてんだよ」
各々が思い思いに過ごす教室の片隅で遅めの昼食を取りながら、トモはふと視界に入ったオミの緩み切った表情を指摘した。
見るだけでドキドキするほど好きなオミの顔ではあるが、惚れた弱みをもってしても不穏に思う。
「そんなに美味いのか?それ」
とりあえずオミが食べているパンを指差してみたものの、どうもそういう訳ではなさそうだ。
トモは首を傾げて、弁当箱の卵焼きを箸でつまむ。
と、目の前のオミがぱかっと口を開けたので、自分の口に運ぶつもりだったそれをオミの口に放り込んでやる。
どう見てもカップルのすることなのだが、当の本人(といってもトモだけだが)は気づいている様子はない。
しかし、
「んー、うまい。トモのお母さんの卵焼きは絶品だよなあー」
と嬉しそうに食べた後で、
「まあ、週末のトモの方が美味しかったけどな」
含みを持たせた言い方をしてぺろりと唇を舐めたオミを見て、さすがのトモも何のことだか気づかないほど鈍くはない。
顔を真っ赤にしてがたんと立ち上がり、緩みっぱなしのオミの頬を両側からぎゅうぎゅうと引っ張った。
「このバカ!返せ!俺の卵焼き返せ!!」
「いでででででで、無理!無理!」
容赦なくやられたオミは、女子が見とれることもある顔を情けなく歪めて、トモの手を外そうともがいた。 急に取っ組み合いになった二人を、クラスメイト達が面白そうに囃し立てる。
「…ったく!」
「いってー…」
ようやく解放されてもじんじんと熱を持つ頬をさすりながら、それでもオミは口元の緩みを抑えることができなかった。

Fin.

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