「未来を描く」


「親友」として過ごして来た2年間。
それが「恋人」に変わって、この先何年続くだろう?
何かが約束された関係ではない。でも願わずにはいられない。
二人がずっと一緒にいられますように……

「トモ、高校出たらどうすんの?」
いつものようにオミの部屋で宿題を片付けていると、ふいに教科書から顔を上げてオミが聞いて来た。
「んー…大学には一応行きたいと思ってるけど。でも志望校とか全然だよ」
っていうか、もう進路の話か?卒業した後の事は、正直言って漠然としか考えてない。まだ高1だし…
オミはオミで、自分から聞いておいて「ふーん」ぐらいの反応だし。
「で、大学出たらその後はどうすんの?」
「え、普通に就職…じゃないかな…」
何でこんな事を聞くのかさっぱり分からなかった。案の定、話は膨らまないわオミも俺も黙っちゃうわで妙に気まずい。
しばらくは宿題を解くエンピツの音だけがカリカリと響いていた。
俺にはこれと言って大々的に公表できるような将来の夢はない。自分の身の丈に合った仕事をして平穏無事に生活できればそれが何より、ぐらいにしか思っていなくて。
今が幸せだから、いっそこのまま時間が止まればいいのになんて思う事もあるけど。
宿題を終わらせて「定位置」におさまっているこんな時とか。
オミの前に座って後ろから抱き締められて、何をする訳でもなく頬を寄せたり指を絡めたり…あったかくて安心して、そのまままどろんでしまうような心地良い場所。
眠ってしまってもオミは怒る事はなくて、俺が目を覚ますと髪や頬にキスをくれて……

「おはよ」

え…?
「ご、ごめ…俺また寝てた?」
「いいよ。トモの寝顔見るの好きだし」
そんな事を言われて照れくさくて外に目をやると夕焼けがまぶしかった。思わず目を擦ろうとして、きらりと光を反射するものに気付く。
「なに、これ…」
「ん?ほら、お揃い」
オミが俺の左手の横に自分の左手を並べてかざした。
それぞれの薬指に光る指輪。銀色の指輪が夕日を受けて金色に見える。
その手をきゅっと握られて、俺の頭にオミの頭がこつんとぶつかった。
「あのさ、トモ。さっきの話だけど」
さっきの話…まだ少し寝ぼけた頭で記憶を辿る。オミの体温が心地よくて、また眠ってしまいそうだ。
「高校出て、大学行って、就職するだろ?」
「うん」
「その時さ、トモの隣に俺はいる?」
「え……」
改めて聞かれるまで、考えた事もなかった。考える必要もないと思っていた。
一緒にいるのが当たり前だと思っていたから。今までも、これからもずっと。
「トモと俺は違う人間だから、違う道を行く事になるかもしれない。でも、そうなっても俺はトモに側にいてほしい」
ゆっくりと、はっきりと言い聞かせるようにオミは言った。何だか意外だった。俺が当たり前に考えていた事を、オミがこんなに真剣に考えていたなんて。
「高校出たら、一緒に住まない?」
オミの申し出を拒む理由は俺にはなかった。ずっと一緒にいてほしいなんて、本当は俺の方から言うことじゃなかったんだろうか。
握り返した手の甲に涙が落ち、慌てて拭った。
「トモ?」
「へへ…嬉しい」
振り向いてぎゅっと抱き着く。痛い程強く抱き締められて、体じゅうがオミで満たされるみたいだった。

絶対に破れない約束を交わした日。
家に帰ってからカレンダーにこっそり印をつけた。

clap更新の励みにぽちっとお願いします♪ 

お題TOP/長編/スピンオフ/短編
サイトトップへ


広告が表示された場合はレンタルサーバーによるものです。

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送