付き合い始めてしばらくして、オミがある質問をよくするようになった。
「トモ、俺のこと好き?」

今日もまた。
そんなに聞いても、俺の答えはいつも同じだよ?
オミが好き。誰よりも好き。
側にいるだけでどきどきして、オミの事を考えただけで眠れなくなったり、訳もわからず涙が出たり。
今こうしているのが幸せすぎて、いつか突然離れて行っちゃったらどうなるんだろうって不安にもなる。もうオミのいない生活なんて考えられない。
そんな思いを口に出すのは恥ずかしくて、俺の答えはいつも「うん」の一言。
するとオミは「そっか」って言って、俺をぎゅっとしてくれるんだ。
でも、何でそんなにしょっちゅう聞くの?

「あのさ、」
今日は「うん」と答える前に、ちょっと聞いてみる事にした。
「最近、それよく聞くよね。俺いつも『うん』って言ってるよね」
オミは目を見ながら聞いてくれていたけど、照れくさいのと気まずいのとで俺から反らしてしまった。目の前のシャツを掴んでオミの肩におでこをくっつけると、薄くコロンの匂いがする。ぎりぎりまで近付かないと分からない、今はきっと俺しか知らない匂い。
「俺は…オミの事、ほんとに好きだし…今だってすごい緊張するぐらい…なのに」
言いながらどんどん不安になって来て、込み上げて来たものをぐっと飲み込んだ。
肩にくっつけたおでこを強く押し付けて顔を隠したけど、震えているからオミには分かってしまったんだろう。名前を呼ばれて背中を撫でられたけど、俺は嫌々をするように首を振った。
「トモ、ごめん。そうじゃないんだよ」
オミは子供をあやすように俺の背中を撫でたり軽く叩いたりしながら、優しい声で話を続けた。
「トモがそういうタイプじゃないなのはよく分かってるよ、逆にだからっていうか…たまにはトモから好きって言ってほしいなーとか…思ってさ」
俺から……?
そういえば、俺からオミに好きだって言葉で伝えた事はあまりない。
付き合うってなった時も言ってくれたのはオミの方からだったし、その時俺は嬉しくて信じられなくて、泣きながら頷いてただけだった。
オミは優しく抱き締めてくれたりするけど、俺はいつも受け身だったから、知らない間にオミを不安にさせてたのかもしれない。
顔を上げると、オミのおでこが俺のおでこにこつんとついた。
「無理にとは言わないから。俺が言う100回に1回ぐらいでいいから…俺のわがまま聞いてくれる?」
こくんと頷くと、今度は唇がくっついた。
オミにキスされると、すごく満たされた気持ちになる。オミの気持ちがそのまま流れ込んでくるような、優しい優しいキスだから。
俺はこういうのを与えられっぱなしで、自分からは返してなかった。
唇が離れると、俺はオミの首にぎゅっとしがみついた。
「オミ…好きだよ。大好きだよ…」
恥ずかしくて目を見て言う事はできなかったけど、オミは俺の背中を強く強く抱いて応えてくれた。

100回に1回を、2回、3回とちょっとずつ増やして行こう。
君にも、君が与えてくれるような幸せを分けてあげたいから。


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