初代拍手お礼文(3)「マーキング」


「とーもーやーくーーーん♪」
登校するやいなや、俊が寄ってきた。オミはクラスの奴に力仕事を頼まれて、今さっき教室を出ていったところ。
「何だよ」
「いや、鬼のいぬ間にと思って…あ?」
俊は辺りをうかがうような素振りをすると、ふと俺の襟元に目を留めた。
シャツの襟をぐいっと引っ張られて、俺は慌てて抑える。
「何すんだよっ」
「…お前らさあ……最近回数増えてんじゃねーの?」
俊は呆れたようなからかうような顔で目を細める。
言いたい事は分かるよ。
初めてした頃は何週間かに一回だったのが週一になって、何か知らないけど最近は平日までしちゃってるんだから。今日だって、前の跡が消えないうちに新しいのがついてるんだし。
っていうか、そんなの自分が一番よく分かってるんだよっ!
「別にいいけどさ、そういう見えるとこにつけるなってちゃんと言っとけよ。ちっちゃくて可愛い学年のアイドルなトモ君がしょっちゅうそんな跡つけてたら、ファンが減るぞ」
「う…うるさいな!ちっちゃいとか言うな!」
シャツの上から跡をつけられた辺りを指でつつかれ、俊の手をぴしゃりと叩く。
「いてーなあー…」
「コラ!何やってんだよ奈良!」
俊が全然痛くなさそうにヘラヘラと手をさすっている所に、オミが血相を変えて走ってきた。
俺と俊の間にぐいっと割って入り、壁を作る。
「ちょっと目離したらこれだよ。すぐトモにちょっかい出しやがって」
「別にちょっかいじゃねーよ、話してただけじゃんか。だいたい他のやつが朝矢としゃべってても何も言わないのに、何で俺だけいつも目くじら立てんだよ」
「あぶねーの、お前はっ」
「お前の方がよっぽどあぶねーだろ!しょっちゅう朝矢にキスマー…」
「わーーーーーーーーーっっ!!!!!」
俊がとんでもない事を言いだしたので、今度は俺がオミと俊の間に割って入った。
これ以上言い合いをさせていたら、2人ともどんな爆弾発言を連発するか分からない。
オミだって、付き合う前から俺たちの事を知っている俊ならともかく、他の誰にばれても「そのキスマークは俺がつけました」とか堂々と言いそうだし…
「あーあ、朝矢君たら真っ赤。じゃ、邪魔者は退散しますかね」
俊は降参とばかりに両手を上げると、その手をひらひらさせながら去っていった。
ほっと一息ついたのも束の間、今度はオミに詰め寄られる。
「何か言われた?何もされてない?大丈夫?」
こんな状況でもオミの顔が近くに来るとドキドキして、ついキスをねだる時みたいに目を閉じてしまいそうになる。そんな事をしたら間違いなくキスされるから、学校では絶対しないけど。
オミは苦々しい顔をすると深いため息をついた。
「あいつ…これだけはっきりマーキングしといてもまだちょっかい出すのかよ…」
(…多分それが逆効果なんだと思うけど…)
オミとはまた違うため息をついた俺の視線の先で、俊が自分の席から小さく手を振った。

以後、今残ってる跡が消えるまではキスマーク禁止。

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