初代拍手お礼文(2)「バイバイの習慣」


「じゃ、また明日」
「うん、駅でね」
別れ際、改札の前でいつもの挨拶。
「あ、そうだトモ」
「何?」
何か思い出したように、オミは手招きをした。
「耳貸して。あのさ…」

ちゅ。

耳元にキスの音が響く。
「え?!」
思わず耳を押さえて大声を出してしまった。
オミは内緒話をする振りをして、手で隠して俺の耳にキスをしたんだ。
「ちょっ、何…」
「聞こえなかった?もう一回言おうか」
何ごともなかったかのうにさらりと言ってのけるオミに、軽く蹴りを入れる。
心臓がばくばく言っていた。

オミはキスが好きみたいで、二人きりの時はもちろん、外でも隙を見てはしたがることがある。
「誰も見てないって。見てても知り合いじゃなければ問題ないよ」
オミはそう言うけど、ただでさえカッコ良くて人目を引く(…と俺が思うのは惚れているからか)オミだから、いつ誰に見られていてもおかしくない。
それに、そうやってキスされた後の俺は真っ赤になっているはずだから、どう見ても不自然じゃないんだろうか。
「じゃあ、知り合いに見られたらどうするんだよ」
「俺たち付き合ってます、でいいんじゃん?」
「バカ」

駅じゃちゃんとできないからと、バイバイのキスはオミの家を出る直前に玄関で済ませてある。
靴まで履いて帰り支度が整っていても、いつもそこからしばらく帰れない。
特にセックスした日のそれは濃厚で……
先に好きになったのは俺の方なのに、いざ付き合ってみたらオミの方がよほど積極的だった。
だからこんなことになっている訳で。

「おいオミ」
俺はオミの耳元に唇を寄せると、ふーっと息を吹き込んでやった。
「……っっ!」
オミの首筋にざわっと鳥肌が立つ。
オミの弱点だ。
俺が同じようにキスすると思ってデレデレしちゃって、ざまーみろ。
「じゃあなっ、明日遅れんなよっ」
言い放って改札を通り、足早にホームへ向かう。
振り返ると、オミが笑顔で手を振っていた。
ちくしょう、あいつ懲りてないな。
俺はオミに手を振り返すと、火照った頬を軽く叩いて駆け出した。


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